桑(くわ)は、日本各地に存在する落葉樹であるクワ科クワ属の総称です。蚕の餌として有名な植物ですが、桑の葉や枝、実は栄養素が豊富なことからお茶や漢方薬に使用されることも多々あります。
特に桑の葉茶には、血糖値の上昇を防ぐ効果がある・糖尿病に効果があると言われています。しかし、実際にそのような効果があるのか、具体的な成分とともに把握している人は少ないのではないでしょうか。
そこで今回は、桑の葉茶は糖尿病に効果があるのか、糖尿病の要因や含まれている栄養素とあわせて徹底的に紹介します。最後に、桑の葉茶の副作用についても説明しているため、日常生活に桑の葉茶を取り入れようと考えている人はぜひ参考にしてください。
桑の葉茶は糖尿病に効果がある?
丁寧に有機栽培された桑の葉茶は、お茶の代表格であるウーロン茶や紅茶、抹茶とは違ってノンカフェイン(100g中0.01未満)のお茶であるため、妊娠中の女性や健康が気になる人におすすめです。しかし、「桑の葉茶は糖尿病に効果がある」という話を聞いた経験のある人は多いのではないでしょうか。
結論から示すと、現状、桑の葉は「食品」に分類され「医薬品」ではありません
しかし、桑の葉茶には糖質ケアにつながる成分「1-デオキシノジリマイシン(DNJ)」が含まれています。実際に、日本の研究団体などによって構成される組織の「研究コンソーシアム」からは、下記のような研究結果が発表されました。
- 1-デオキシノジリマイシン(DNJ)を豊富に含んだ桑葉エキスには、食後における血糖値の急上昇を抑制する効果がある
- 桑葉エキスを1か月以上継続して摂取しても、低血糖は起こらない
(出典:国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構「1-デオキシノジリマイシン高含有桑葉エキスは食後の血糖値上昇を抑制する」https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/tarc/012906.html)
血糖値の急上昇を抑制し、かつ継続摂取でも低血糖は起こらない桑の葉は、高血糖に悩む人の救い手となるでしょう。
糖尿病の要因とは?
そもそも糖尿病とは、インスリンの作用不足によって血液中のブドウ糖(血糖)が増加し、慢性的な高血糖状態となってしまう病気です。高血糖が続けば、腎症や神経障害などの合併症を患うリスクがあります。
また、糖尿病は大きく1型糖尿病・2型糖尿病・妊娠糖尿病やその他の種類の糖尿病といったいくつかの種類があり、種類によって要因が異なることも特徴です。
ここからは、糖尿病の要因を各種類に分けて紹介します。
1型糖尿病
1型糖尿病とは、主に自己免疫疾患が原因でインスリン分泌機能をもつ「β細胞」が破壊され、インスリンがほとんど分泌されなくなることによって起こる糖尿病の一種です。1型糖尿病と診断されたら、インスリン製剤の自己注射をはじめとした治療を受けなければならないことから、「インスリン依存型」とも言われています。
1型糖尿病の要因は、明確に解明されているわけではありません。しかし、本来であれば体内に入った外敵から身体を守るはずの免疫が、何らかの原因でインスリン分泌機能をもつβ細胞を攻撃・破壊してしまうことが主な要因とされています。なぜ免疫がインスリン分泌細胞を突然破壊してしまうようになるのかは、はっきり分かっていないことが現状です。
2型糖尿病
2型糖尿病とは、遺伝的因子または生活習慣などの環境因子によって起こる糖尿病の一種です。「インスリン非依存型」とも言われています。
遺伝的因子の場合、母親や父親から受け継いだ遺伝子の性質がインスリン分泌のしにくいもの(インスリン分泌低下)であることが具体的な要因となります。そして環境因子の場合は、ストレスや食べすぎ、運動不足、肥満などの生活習慣によってインスリンの働きを抑制してしまうこと(インスリン抵抗性)が要因です。
このように2型糖尿病の中でも要因はさまざまあり、治療法もそれぞれ異なります。
妊娠糖尿病やその他の種類の糖尿病
1型糖尿病や2型糖尿病は比較的代表的な糖尿病の種類ですが、その他にも妊娠糖尿病などの種類があります。
妊娠糖尿病とは、妊娠中に初めて発見・発症された糖代謝異常のことです。妊娠中は、糖が赤ちゃんの重要な栄養素となります。赤ちゃんに栄養を与え続ける中で、うまく血糖値のコントロールができなくなることにより妊娠糖尿病を発症してしまうことが特徴です。
また、その他特定の病気によっても、治療薬の影響で血糖値が上昇し糖尿病が起こるケースもあります。
このような種類の糖尿病(糖代謝異常)は、多くの場合で根本的な要因を取り除けば血糖値は正常な状態に戻りますが、一度発症してしまった人は将来的な糖尿病リスクが高まるとも言われています。
桑の葉茶にはビタミン・ミネラル・食物繊維が豊富
血糖の急上昇を防ぐ効果がある桑葉エキスが豊富な桑の葉茶は、具体的に下記のような栄養素が含まれています。
●ビタミン
桑の葉茶には、ビタミンA・ビタミンB1/B2・ビタミンCなどのビタミン群が豊富に含まれています。特にビタミンB1は、糖質を消費してエネルギーに変えるときに必要なビタミンになります。ビタミンは、人体の機能を正常に保つために必要とされている有機化合物ですが、体内で生成されることがほとんどなく、食物で摂取することが基本です。ビタミンAはほうれん草の10倍含まれているとされており、健康維持にも効果的と言えるでしょう。
●ミネラル
桑の葉茶には、カルシウムや鉄分、亜鉛などのミネラルも豊富に含まれています。ミネラルは生体組織の構成、機能維持に必要な栄養素ですが、ビタミンと同様体内ではほとんど生成されないため、食物からの摂取が基本です。しかし、ミネラルは互いに吸収するなどの影響を与え合うため、摂取バランスには注意しておきましょう。
●食物繊維
桑の葉茶には、小腸で消化されずに大腸まで届く成分で、健康によいとされているケールよりも数倍の食物繊維が含まれています。食物繊維は、整腸効果や血糖値上昇の抑制が期待できる栄養素で、多くの日本人に不足している成分とも言われています。桑の葉茶を積極的に摂取することにより、腸内環境の改善・維持が期待できるでしょう。生活習慣病対策に励みたい人だけでなく、ダイエット中の人にもおすすめです。
桑の葉茶には副作用がある?
桑の葉茶は、大きく茶葉タイプと粉末タイプ、ティーバッグタイプがあります。商品によって風味や成分の含有量も細かに異なります。しかし、桑の葉茶はどのようなタイプであっても医薬品ではないため、副作用は存在しません。とは言え、多くの栄養素・食品成分を含有しているため、摂取量には注意が必要です。
桑の葉茶には食物繊維が多く含まれているため、それぞれの適切な摂取量を超えて摂取することで、お腹が緩くなったり張っている感覚となったりする可能性があります。また、現在何らかの疾患を抱えている人や、医師から食事や生活習慣などで指導を受けている人は、桑の葉茶を摂取してもよいかを医師に聞き、適切な指示を仰ぐべきと言えるでしょう。
日頃から服用している薬の作用によっては、桑の葉茶との相性がよくない可能性もあり、体調に何らかの悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、カリウム制限を受けている人も注意しなければなりません。桑の葉茶にはカリウムが豊富に含まれており、高カリウム状態となる可能性が高いためです。
また、桑の葉茶を摂取するようになってから身体に何らかの不調をきたした場合は、すぐに摂取を中止して医療機関に相談するとよいでしょう。なるべく不調をきたさないように、毎日適量を摂取し適切な量の栄養素を取り入れることをおすすめします。
まとめ
「桑の葉茶は糖尿病に効果がある」という話は、厚生労働省における食薬区分の判断が待たれているところです。現状、桑の葉茶は医薬品ではなくあくまでも食品です。
しかし桑の葉茶に含まれる桑葉エキスには、「食後における血糖値の急上昇を抑制する効果がある」という研究結果も出ています。また、ビタミン・ミネラル・食物繊維なども豊富に含まれているため、「健康的な食生活を行いたい」という人にはおすすめです。
前述の通り、桑の葉茶は医薬品ではないため副作用はありません。しかし、栄養素が豊富であることから、摂取量に注意しておかなければならないことも覚えておきましょう。ここまでの内容を参考に、ぜひ人気の桑の葉茶を日々の生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。