桑のチカラ第10回 ー『桑の栄養四天王』④ クロロゲン酸編ー

桑に含まれる多くの栄養素の中で、特に代表的な4つ「ルチン」「カテキン」「ケルセチン」「クロロゲン酸」。そんな『桑の栄養四天王』の特徴、効果、そして桑との関係性を紹介していきます。今回紹介するのは「クロロゲン酸」についてです。

1.洋のカテキン? 「クロロゲン酸」

『四天王』の最後を務める「クロロゲン酸」。特徴的な名前のため「名前だけは知っている…かも」という人も多いかと思います。クロロゲン酸はコーヒー豆から発見されたのが始まりであり、この他にも芋類やりんご、ごぼうなどにも含まれていることが現在分かっています。特にコーヒー豆にはあのカフェインよりも多く含まれているうえ、クロロゲン酸はお茶で言う所のカテキンのような、苦味や渋味などの味の決め手を司る主要物質でもあり、コーヒー豆を形づくるうえでは欠かせないものです。

★ちなみにクロロゲン酸は熱によってコーヒー酸とキナ酸に分離します。コーヒー酸は別名「カフェイン酸」とも呼ばれていますが、皆さんの知っているカフェインとは違う物質です。この点も「お茶に含まれるカテキン」と「カテキンという物質」が別物であるカテキンと似ていますね。

2.その役割は意外にも…?『四天王』クロロゲン酸の効果

クロロゲン酸もまた『四天王』の他の物質と同じポリフェノールであるため、強い抗酸化作用や血糖値上昇を抑える効果があります。では、クロロゲン酸特有の効果は何かあるのでしょうか?

クロロゲン酸には「脂肪肝の予防効果」という聞きなれない効果があります。脂肪肝とは、肝臓に余分なエネルギーが変化した中性脂肪がたまった状態のことを指し、放置しておくとメタボリックシンドロームと合併し、肝炎や肝硬変を引き起こす原因となりますが、クロロゲン酸はそんな脂肪肝ができるのを予防することができるのです。今までに紹介してきたルチン、カテキン、ケルセチンにはない効果であり、それにくわえて前述した抗酸化作用や血糖値予防効果によってアンチエイジングや糖尿病も予防できる、クロロゲン酸は『身体の掃除屋さん』と言えるでしょう。

★メタボリックシンドロームとは?…内臓脂肪型肥満(よく言われる肥満の状態)に高血糖高血圧脂質異常症(血液中の脂質が過剰、もしくは不足している状態)のうち2つ以上を合併した状態のことをいい、動脈硬化等のリスクが高まる要因になります。「メタボ」という略称でも知られています。

3.桑とクロロゲン酸

クロロゲン酸も『四天王』として桑の栄養を支える主成分の1つとなっていますが、同じ『四天王』にはカテキンも存在します。先述したように、カテキンはお茶の苦味・渋味成分でありながら様々な効果を持っている優れた物質でありますが、クロロゲン酸もコーヒーの苦味・渋味・雑味を司る物質であり、上で紹介したような作用も持ち合わせています。つまり桑は「和」の嗜好品であるお茶の主成分と、「洋」の嗜好品であるコーヒーの主成分を1つに兼ね備えていることになるのです。以前のコラムでお話した「桑は万能な素材である」という証拠がこのようなところにも表れていることが分かります。

そんなクロロゲン酸は永源寺桑の里産の桑100gにおよそ900㎎含まれています。同じ100gでは流石にクロロゲン酸が含まれている代表的な食品であるコーヒー豆には及びませんが、コーヒー1杯ではコーヒー豆は10gしか使われないうえに、コーヒーの飲みすぎは睡眠不足やカフェイン中毒などの身体に悪い影響を与える危険性もあります。そう考えれば100gをお茶でも料理でも手軽に使うことのでき、常識の範囲ならば体に悪影響も与えず、これまでに紹介した様々な効能も一気に享受することができる桑の方が優れていると言っても間違いないでしょう。

4.まとめ

コーヒー豆から初めて発見されたクロロゲン酸はコーヒー豆の味の決め手となる主成分の一つであり、お茶の渋味成分である同じ『四天王』のカテキンと類似性が見出せます。また、ポリフェノール特有の効果に加えて、脂肪肝を予防するという今までになかった効果を持ち、体内が悪い物質に侵される前に素早く予防するという掃除屋の一面も見せることが分かりました。また、桑とは糖尿病予防の観点は言わずもがな、カテキンと共存しているという特徴もあり、さらにはコーヒーにおけるカフェイン中毒のように身体に悪影響を及ぼす心配もほとんどないという、抜群の相性を誇ることが分かりました。

ルチン、カテキン、ケルセチン、クロロゲン酸…4回に亘って桑の栄養を支える主成分について紹介してきました。そして「歴史」「万能薬」「万能素材」そして「栄養」と、ここまで桑を様々な方向から見てきました。…遠い遠い昔から人々の生活の近くに長く存在し、薬として、あるいは養蚕として親しまれてきた桑は、多くの人々に忘れ去られても尚、その灯を絶やすことは決してありませんでした。そして研究が進んだ現在、桑は葉に、実に、皮に、枝に、他にはない様々な効能と多くの栄養素が秘められた万能薬だと判明しました。これほどの「深さ」と「広さ」を持つ植物は他にはありません。そんな桑の価値に、重要性に初めて、或いは改めて気づくことができたと思います。このコラムを読んで「最近忙しくて食生活が崩れているな」と思った方々は、桑が持つ糖尿病予防や抗酸化作用などの多くの効能をもって健康な体作りに、それとは逆に「きちんとした食生活が送れている」と思う方々にも『桑の栄養四天王』をはじめとした桑の豊富な栄養をもって日々の更なる活力につなげて欲しいと思います。

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