桑のチカラ第3回 ―万能な桑 前編(桑白皮、桑枝、桑樹皮編)―

桑はおよそ2000年にわたって、日本人の生活と深く関わり続けてきました。昨今の健康食品ブームで再びスポットライトを浴びる桑ですが、実は捨てる所のない有用性と、多彩な効能を兼ね備えたまさに「万能な植物」と呼べる代物だということはご存じでしょうか?今回からそんな桑のチカラについて詳しくご紹介致します。

1.桑に眠る『五つの秘宝』

桑は北半球の温帯に生息する、クワ科クワ属の落葉樹…と言われてもピンとこないでしょう。桑にはこれといって目立った外見的特徴はなく、実際桑畑で育つ若木や、育ちきった桑の木はそのあたりに生えている植物や木と何ら変わりがないように見えます。実際、桑は日本全国に広く分布しており、公園や川沿い、畑の近くなどをよく観察すればすぐに見つけられる身近な植物なんです。

しかし、その見た目に反して桑には秘めたる力を持った五つのお宝が隠されているのです。まずは「桑の葉」。歴史的には養蚕に欠かせない素材として、その裏では茶の代用品として最も長く日本人と繋がっていた素材です。次に「桑の実」。別名桑椹、またはマルベリーと言い、日本だけでなく西洋でも愛された食材です。さらに、桑の根の皮のことを指し、紀元前の中華時代からその名を知られていた「桑白皮」、若木が生存する主要な器官である「桑枝」、そして未だ謎に満ちた「桑樹皮」。以上が桑の五つのお宝です。葉、実、枝、根、皮。地味だと思っていた体全体にチカラが漲っている、そう考えると桑を見る目が変わってきませんか?

2.最古の桑のチカラ「桑白皮」

今回は桑の五つのお宝のうち、「桑白皮」、「桑枝」、「桑樹皮」の三つについて紹介させていただきます。最初に学ぶのは「桑白皮」です。桑白皮とは桑の根皮を乾燥させたもので、中国最古の薬学書「神農本草経」には「解熱、鎮咳去痰の薬」と記され、古代から漢方として服用されていました。現代でも風邪や気管支炎の治療薬として用いられることがあるほか、美白作用のある化粧品、さらには桑の葉のようにお茶として飲まれることもあるようです。ちなみに桑の葉や桑白皮だけでなく、桑枝や桑の実で作られたお茶も存在します。気軽に植物の効能を摂取することができて、嗜好品としても薬としても利用できるところを見ると、喫茶文化が一般人にまで広まるのは自明であったと分かります。

そんな桑白皮、というよりほぼすべての部位に含まれる、桑にしかない固有の成分、それがDNJ(1-デオキシノジリマイシン)です。DNJとは糖と似た性質をもち、体内に入れると糖と間違えられて吸収され、余分な糖の吸収を抑えることで、血糖値の抑制や糖尿病の対策ができる優れものです。そんなDNJが具体的にどれくらいの影響を及ぼすのかは、次回の「桑の葉編」で実験を通してご紹介致します。

3.腫れや痛みに効くチカラ「桑枝」

続いて「桑枝」のチカラについてです。枝を食べると聞くと「硬そう」、「栄養はあるのか」、「そもそも食べられるのか」と疑問に思うことでしょう。しかし、桑の若木の枝は生薬として関節痛やむくみに効果があり、桑白皮と同じくDNJによる糖尿病対策も行うことができます。他の部位と比べると活用例も少なくあまり目立ちませんが、実は桑白皮と一緒に服用することで桑白皮の効能を上昇させるという隠れた効果も持っています。ちなみに「枝」と「茎」は言葉は違えど性質はほぼ同じであり、桑枝は実質的に茎を食べているのと同じと言えます。ちなみに茎の部分を食べるものとしては、アスパラガスや芋類、蓮根、山菜類などが挙げられます。そう思うと枝に栄養があると言っても不思議ではないですよね。

4.未知なる桑のチカラ「桑樹皮」

このように現代では桑の効能の多くが明らかになっています。しかし一方で、「桑樹皮」については未だに明らかになってないことが多いです。桑木の表面に形成される桑樹皮にはRSV(レスベラトロール)と呼ばれる成分が多く含まれており、DNJと同じく血糖値を抑える効果があるということは2014年の研究で明らかになりました。 ちなみにこのRSVですが、ブドウの果皮などにも含まれ、血糖値の低下以外にも動脈硬化の予防、肌のハリを保つ作用、さらには種を超えて生物の寿命を延ばすという驚くべき力があると判明しています。同じ哺乳類であるマウスの寿命延長に成功したことから、仮に人間にも作用するようになれば、桑は本当に「不老長寿の妙薬」になるかもしれませんね。

5.まとめ

その辺の一植物に過ぎない桑には、秘めたるチカラを持った五つの宝があります。その中でも「桑白皮」は主に鎮咳去痰の力を、「桑枝」は腫れを癒す力を持ち、さらには桑にしか存在しない独自の成分DNJによる血糖値の抑制を共通して持っていました。また、RSVを多く含む「桑樹皮」にも同様の力があり、今後の研究次第で桑がさらなる効能を持つ「不老長寿の妙薬」になれるという期待が深まりました。

次回は「万能薬・桑 ―桑の葉編―」です。桑と聞いて真っ先に思い浮かべる桑の葉は、その効能や活用法も幅広く、まさに万能薬・桑の大エースと言えます。一体どのようなチカラを見せてくれるのでしょうか、お楽しみに。

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