桑のチカラ第5回 ~万能な桑 後編(桑の実編)~

「桑白皮」「桑枝」「桑樹皮」「桑の葉」……過去2回にわたって、万能な桑の利用法や効能を部位ごとにお伝えしてきました。後編は桑が持つ暗赤色のチカラ、桑の実について知りましょう。

1.桑の実によく似た果実?

そもそもみなさんは、桑の実を生で見たことはありますか?「桑の木になっている」といっても、以前お伝えしたように桑の木はそこまで目立つ存在ではないため、見逃している、あるいは見たことがないという人が多いはずです。
桑の実は小さな粒が集まったような形状をしており、重さはおよそ3g、成長するごとに白→赤→赤黒色に変化していき、最も食べごろなのは熟した赤黒色の時です。……ここまで聞いて、みなさんは何か似たようなものを連想するかもしれません。そう、ラズベリーです。桑の実とラズベリーは写真だけではほとんど区別がつかないほど似ており、ラズベリーの品種を育てていたつもりが、実は桑の実だったという話もあるそうです。

ラズベリーは味もよく栄養も多く含まれた「スーパーフード」として広く知られていますが、桑の実も負けてはいません。「飲食」と「薬効」、二つを兼ね備えた桑の実のチカラを見ていきましょう。

2.栄養成分のチカラ『桑の実』

桑の実は甘みと酸味のバランスが良くさっぱりとした味わいで、そのまま食べてもよし、ジュースやジャムにしてもよし、果物と一緒にスイーツにトッピングしてもよしと、私たちが普段飲み食いすると言う点では、薬効が強い桑白皮、桑枝、桑樹皮に比べると、圧倒的に勝っていると言えるでしょう。また、栄養の面でもビタミンCやカルシウム、老化予防のアントシアニン、高血圧を防ぐカリウムなどを含んでおり、特にカリウムに関しては果物としては随一の含有量を誇るほど優れています。

名称100gあたりのカリウム量
桑の194mg
ぶどう65mg
みかん(薄皮を含める)130mg
140mg

ここまで非の打ち所がない果実なのに、なぜあまり知名度がないかというと、収穫時期の短さや傷みやすさなどで、単にスーパーなどで見かけないためです。しかし桑が育てにくいかと言われると全くそんなことはなく、剪定さえきちんと行えば栽培できてたくさんの実を実らせることができるため、ガーデニング初心者にもお勧めされるほどです。もしこのコラムで桑に興味がわいてきた人は育ててみるのもよいかもしれません。

3.『桑椹(そうじん)』―万能な桑の最後のピース―

続いて、もはや桑の効能を語るうえでは欠かせない薬効としての利用法について紹介します。乾燥させた桑の実を「桑椹(そうじん)」と呼び、体内を満たしている液体や喉の潤いを維持したり、良い便通を維持する作用が見られます。しかもドライフルーツと変わりないため、桑の実を手に入れられれば意外と簡単に出来たりもします。

ここまで解熱薬の桑白皮、むくみを抑える桑枝、寿命を延ばすかもしれない桑樹皮、糖ブロックの桑の葉と、桑の薬効について何度もお伝えしましたが、部位ごとでここまで効能が違うとは、もはやそれぞれ別の植物なのではないかと思ってしまいます。しかしこれこそが『万能な桑のチカラ』なのです。

4.まとめ

桑の実は赤黒く粒が集まったラズベリーに似た形状をしており、その甘みと酸味はジュース、ジャム、スイーツのトッピングといった様々な活用ができます。また、アントシアニンやカリウムが多く含まれており、栄養面でも他の果物に引けを取りません。桑の実はガーデニングの一環としてそのチカラを享受することもできます。薬効としてはアンチエイジングや喉の潤いの保護、便通維持などこれまで紹介した桑の別部位とはまた違ったものが見られ、万能な桑の証明につながったと言えます。

古くは後漢時代の「神農本草経」に記された桑は、時を越えて万(よろづ)の効能が新たに発見され、「薬効」「食糧」など万の姿にその身を変えて多くの人々の健康を陰から支えてきました。ここまで読んでいただいたみなさんは桑が『万能』であるということについて何も疑うことはないでしょう。「桑ってこんなに凄かったのか」そう思ったこの機会に是非桑のチカラに触れてみてはいかがでしょうか。

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